スピリチュアル・ケアとは?

 元来は、パストラル・ケアと言ってきました。1930年代、神学校では、神学生のケアする能力の低下が言われていました。牧師になる学生のケアする能力を伸ばすため、ボストンの精神科の病院を実習場所にして、学生達のケア能力を高めるためのプログラムが、スピリチュアル・ケアの出発点でした。パストラルという言葉は、元来は「羊飼いの」という意味であり、「羊飼いが羊の群れを世話する」というところから、「信徒を世話する牧師・神父の」という意味になりました。牧師は通常教会に属しており、そこに来る人々を、ケアし、育てることが主眼です。同時にキリスト教世界であるヨーロッパやアメリカでは、伝統的に戦争時に兵士のケアをする従軍牧師(神父)がいました。この人々は教会に所属する牧師や神父とはまた異なった働きをしていましたが、軍隊には必要不可欠な人々でした。

 1950年代に入ってくると、少数者や「社会的弱者」の権利保護の考え方が広まり、1960年代になると、この考え方が、黒人による公民権運動へと拡大し、この運動は、キリスト教会だけでなく、広く社会の多方面にわたって展開されるようになりました。この影響もあって、教会を越えて、対象者のスピリチュアル・ケアも進化し、従来の牧師、神父の学びの上に、さらに専門職としての学びが要求され、その学びの標準化もされ今日に至っています。

 パストラル・ケアワーカーが、教会というコミュニティーを超えて、軍隊のみならず、病院、学校、福祉施設、刑務所、警察や消防などに、専門職として置かれ、キリスト教徒だけではなく、前述の組織の職員のスピリチュアル(霊的)ケアを行うようになって、教会における牧師の活動と区別する意味で、チャプレンの行うケアをスピリチュアル・ケアと呼ぶようになってきました。今日、アメリカやヨーロッパ諸国では、チャプレンと呼ばれる専門家が、これらの施設や団体で働くのが、当然となっています。